絶望再び、英検準2級・二次試験 パート2

絶望再び、英検準2級・二次試験 パート2

試験室に入るとスーツを着た清潔感のある40代か50代くらいの男性が、部屋の奥に座っていた。

緊張が一気に高まる。
部屋にはもちろん他には誰もいない。
おじさんとおじさんの二人だけの空間だ。

ハロー、と先に言ったのか言われたのか忘れたが、ハローと言うと、さっそく面接カードを渡すように言われた。もちろん英語で。

「Here you are.」と、どうぞとカードを渡して着席すると、名前や受ける試験のグレードが合っているか確認され、質問に答えた。

ここまでは英検の対策本通り。
だが続けて試験官はこう言った。

「How are you today?」

・・・なんって言った?

そう、前回の部屋に入る前に「May I come in?」を言うのか言わないのか問題と同様に、試験の流れはさらっとしか見ていないので、この流れは対策本に書いてあったけ?と思い出せず一瞬パニックになった。

中1の頃にさんざん使ってきたこのフレーズも極度の緊張で、自分の調子を聞かれたのか、天気がいいのかどうかを聞かれたのかが分からず、口があうあうしてしまった。。。

まさか試験官も、ここでつまづくヤツがいるなんて想像もしていなかっただろう。
二次試験にまで来られる人間は、二次試験に受かる見込みのある人達ばかりのはずだからだ。

百戦錬磨の試験官はいったい、どう思っていたのだろうか。
だが僕にはそんなことを考える余裕もかった。

この状況で天気のことなんか聞かないだろう!と正気に戻り、「I’m fine thank you.」と答えると、問題カードが渡された。

文章の黙読と音読を行い、1問目が始まる。

1問目は質問に対して、”By”とか”Because”とかを抜き出した文章の頭に付けて答えれば良いだけで簡単なはずだったが、文章が頭に入ってこず、どこを抜き出せばいいか分からない!

試験中に不自然な間が空くと、評価が下がり、さらにそのままだと次の問題に写ってしまう。
やばい!やばい!と思いながら、間を繋ぐために「Please wait. I’m thinking now.」と適当な英語を言いながら、抜き出す場所を探した。

それっぽい文章を見つけたが確信がない。
だが、もうタイムオーバーだ。

質問が”How”で始まっていたので、「By 〜」と、抜き取った文章を答えた。
試験官それに対しての反応はなく、合っているのかどうかわからないまま2問目の質問が始まった。

2問目は予想していた通り簡単だった。
イラストに書かれている人達のしていることを、現在進行形にして答えていくだけだからだ。

3問目も同様にイラストに書かれていることを答えるだけなのだが、今の状況や原因と吹き出しに書かれていることを接続詞で繋げて答えるので、ちょっと難易度は上がる。
スマホを落とした女性が描かれており、吹き出しにはスマホにヒビが入っている。

「She drop a her smartphone and she think broke it.」

こんな答えをしたと思う。
3単元の`s`とか、前置詞とか、時制とか、文法のことなどほぼ頭にない。
ただ答えねばと言う一心で出た言葉だ。

そしていよいよ難関の4問目と5問目。
問題カードを置き、試験官が話してくる。それに対して答える。
答えに必要な情報は、試験官の言葉のみ。

聞き取れるのか?何を話してくるのか?
そんな気持ちで不安いっぱいになりながら、試験官の口が開いた。

・・・なんて言った?

序盤の挨拶と同じ状態だ。いやそれ以上に何を言ったか分からなかった。
聞き取れなかったものは理解はできない。つまり答えれない。
これはもう必殺の言葉を出すしかなかった。

「パードゥン?」

聞き返すことで評価は下がる可能性はあるが、NGではない。
自然な流れで会話を保たねばと思い、すぐに聞き返した。

インターネットを使うことは英語の勉強に良い方法か?というような内容だった。
そう、2度聞けば分かることもある。

Yesと答えて、なぜ?と聞かれるので、インターネットで海外の人と話すことができるし、オンラインレッスンは安いといったことを簡単な英語で返した。
評価は、可もなく不可もなくといった感じだろう。

最後の問題。
・・・なんと聞き取れた!

「たくさんのレストランがあるが、君はレストランで食事をするのは好き?」

という質問だ。
聞き取れたことに感動し、Yes!!と答えた。

すると試験が「Please tell me more.(もっと聞かせてくれ)」と言ってきたが、その瞬間にハッとなった。
答えを何も考えていない。。。

一生懸命に考えたが、思い浮かばない。
そもそも日本語が浮かばない。

それもそのはず、僕は外食より家で食べる方が好きだからだ。
たまに外で食べる飯はうまいが基本、家の方が好きだ。

選択を間違えたと思い、最後の究極技の禁じ手を使うしかないと思った。

「ソーリー!No!!!」

これがありなのか分からなかった。
試験対策本にも、途中でYes/Noを変えてもいいかどうかなど書いていなかったからだ。

どうなるのかと思ったが、試験官は答えた。

「Why not!?」

なんと試験続行。
ちょっと一瞬、感動してしまった。

だが感傷に浸っている場合ではない。
答えねば。英語を作らねば。
日本語はなんとか浮かぶのだが、それを英語にできない!

必死に簡単な日本語を頭の中で作ろうと思うも、それを英語に変換できない。

返答をする時間としては、もう時間切れだろう。

あきらめたが、何も答えないのは最悪だと考え、問題集の丸暗記していた英文を答えた。
もちろん回答になっていない。
会話としては不自然すぎるだろう。

うつむきながら答え、「終わった」と思った。

その瞬間、何かから解放された気分になった。
顔を上げると試験官がこちらを見ているが、何も言わない。

だから試験官の目を見ながら、笑顔でこう言った。

「ーーエンド。」

カクカクと小刻みに顔をうなずかせながら回答がすべて終わったことの合図を送ると、試験中ずっと真面目に対応してくれていた試験官が、最後の僕の行動でわずかだがちょっと笑顔になった。

もちろん笑われたのではなく、笑顔を出したから笑顔になったと言う感じ。
顔もカクカクしてしまったし、変な空気を作ってしまったのかも。

そして清々しい気持ちで部屋を出ると、まだ待機している学生たちがいたので、「がんばれー」と思いながら会場を後にした。

こうして僕の戦いは終わった。

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